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ひとりのろう者からあなたへ

ろう者として生まれて感じた社会の壁と合理的配慮とは

文科省主催の合理的配慮のセミナーで合理的配慮を拒否!?

 

文科省が合理的配慮を分かってない!?

少し前、こんなことがありました。

Twitterより。

 文科省が主催の合理的配慮の企画だから期待できる、色々と勉強したいと思って申し込んだぶりりんさん。

しかし、申し込み時に「手話通訳をお願いします」と頼んであったにも関わらず、そのお返事が1か月も来なかったあげく、更に耳が聞こえない人相手に電話で「手話通訳の用意はできません」と断ってきたそうです。

 

これはどういうことなのでしょうか。

その前に、まず「合理的配慮」とは何かについて簡単にまとめておきます。

 

合理的配慮とは

それでは、合理的配慮とは何なのかを簡単にまとめてみます。

合理的配慮(ごうりてきはいりょ)とは、障害者から何らかの助けを求める意思の表明があった場合、過度な負担になり過ぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要な便宜のことである。障害者権利条約第2条に定義がある。

引用元:合理的配慮 - Wikipedia

つまり、どんな障害者でも何かの企画に参加したい、そのための配慮が欲しいと言ってきた場合は健常者の参加者と対等に参加できるように対応していくこと、これが合理的配慮であると考えられます。

 

この場合、ぶりりんさんは耳が聞こえないので手話通訳をお願いしたい、と申し出ていました。

それに対して文科省はもちろん、この企画に対して手話通訳者を探して配置する配慮をしなければなりませんでした。

しかし、その配慮義務を怠ったばかりでなく、聴覚障害者に対して電話で連絡した、ということです。

この件からも、私は「合理的配慮を広めるためのセミナーなのに、やる人が障害者のことを分かってないのでは・・・?」と危惧しました。

 

もちろん、全ての人が全ての障害者を理解する必要がある、とは言いませんが、「耳が聞こえないので手話通訳をお願いしたい」と言っている人に対して電話・・?は少し考えられませんね。

 

しかしながら、そもそも「聴覚障害者」のことをあまりよく知らない人も多いと思いますので、この件は一旦置いといて、次に聴覚障害者への合理的配慮とは何があるのか?についてまとめていきます。

 

よろしければ皆様も、自分で企画を設ける時、聴覚障害者から参加したいと申し出があった時のために読んでおいてもらえると嬉しいです。

 

 聴覚障害者への合理的配慮とは

そもそも、聴覚障害者(ろう者・難聴者・中途失聴者・高齢難聴者含む)への合理的配慮とはどんなものがあるのでしょうか。

 

ここでのポイントは、聴覚障害者は人によって聞こえ方が様々」だということと、聴覚障害者はみんなが手話できるわけではない」ということです。

この2つを覚えておいてもらえれば嬉しいです。

 

聴覚障害者への通訳の種類

まず、会議やセミナーなどの場において聴覚障害者へ話の内容を伝える方法は色々とありますが、その中でも最もよく使われる方法を3つ書いていきます。

手話通訳

まず最初に考えるべきは「手話通訳」です。

手話通訳は、発言者の発言をほぼ全て(100%は難しいかもしれませんがなるべくリアルタイムで)手話に変えて通訳することです。

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これには技術が必要であり、日本語⇔英語の音声通訳と同等の技術が求められます。

しかし、手話通訳者もピンキリで、発言者の発言を確実に伝えられる手話通訳者はそうそう多くありません。

ひどい時は、発言者の発言内容を間違って伝える手話通訳者もいます。

なので、確実に発言を伝えたい!と思う時は、それなりにお金を払ってちゃんとした手話通訳者に来ていただく方が企画開催者にとっても聞こえない人にとっても安心です。

 

要約筆記

要約筆記とは、発言者の発言内容をなるべく多く伝えるために筆記通訳することです。

ノートに書く方法と、パソコンを使って伝える方法の2つあります。

そして今はパソコンを使った要約筆記が主流となってきています。

 

1:ノートに書いて伝える要約筆記

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2:パソコンで伝える要約筆記

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注意:パソコン通訳の場合、通訳を受ける人が少人数(1~2人)だけの場合はパソコンを直接見せながら要約筆記をするやり方もあります。

基本的には、イラストのようにパソコンとスクリーンをつなげて、パソコンで打った文字がスクリーンに映るようにするやり方が多いです。

 

磁器ループ

 磁器ループとは、有線マイクをループアンテナにつなげると、そのループアンテナの班内に入った人(補聴器装用者)であれば直接喋っている人の声が補聴器に入りやすくなり、それで聞き取りやすくなる・・というやり方です。

これは軽度難聴者に有効です。

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 この3つは、(通訳者の技術によりますが)発言者の発言内容をできるだけ100%伝える努力が可能な方法です。

 

では、次に、文科省の企画担当者からのお返事にパワポがあるので、ご理解ください」という方法だと、どうしてダメなのかを考えていきましょう。

 

 通訳とは内容をなるべく100%伝えること

当たり前ですが、日本語⇔英語間通訳において、もしあなたが英語が分からない状態で英語圏の方々に囲まれた企画に参加しなければならなくなったとします。

その企画の内容は、講演者のお話を3時間聞くものとします。

 

その中で、あなたは「日本語通訳がない」状況で、話す内容をレジュメで渡されておしまい。となった時どう思いますか?

 

レジュメの内容そっくりそのまま話す講演はない!

 

もちろん最初は、「レジュメがあるならまぁ、いいかな」と思う人もいるかもしれません。

 

しかし、問題は、講演者がレジュメの内容を一字一句そっくりそのまま話すとは限らないということなのです。

当たり前ですよね。

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実際には、レジュメの内容を更に細かく、詳しく話したり、また、レジュメに書いていないことも色々と話すのが講演です。

また、レジュメに載っている文章をそのまま読んでいたとしても、その補足を話すことだってあります。

 

そういう時、あなたは、「レジュメだけでは分からない!レジュメ以外に話している内容も知りたい!!」と思ってじれったくなりませんか?

 

むしろ、レジュメに書いてある一字一句漏れなくそっくりそのまま講演されていたら、参加者みんな「これじゃレジュメをそのまま読んでいるのと変わらないじゃないか!」となるでしょう。

 

そうです、私たちは、「パワポがあるからそれでいいでしょ」みたいないことを言われても困るのです。

むしろ、パワポがあるからそれで勘弁してと言うぐらいなら、それと同時に講師に対しても「パワポに書いてある内容を一字一句そっくりそのまま読んでください。パワポに書いていないことは一切話さないでください」とお願いしてください。

それぐらいのことをしないと、平等とは言えないのです。

 

しかしそれだと、もちろん講師も困ってしまいますよね?

なので、通訳は必ず必要になるし、「パワポがあるのでご理解ください」というのは決してあり得ないことなのです。

 

情報保障とは、健常者と同じだけの情報を伝えること 

 

ここで、「情報保障」という言葉が出てきます。

この言葉、皆さんは聞いたことありますか?

 

簡単に言えば、「今、そこにある情報(耳に入ってくる情報)をなるべく100%に近づけながら情報弱者に伝えること」です。

 

そして、耳が聞こえる方がその情報を仮に90~100%受け取れるとすると、ろう者難聴者は通訳がない状態だと0~30%、通訳がある状態でも通訳者の技術や講演者の話し方によっては40~60%、技術のある人でも60~80%(かなりうまい人でも90-98%ぐらい)の確率で受け取れる情報が減っていくのです。

(★これは私の体感および、実際に通訳者に聞いた確率です)

 

それでも、やはり通訳があるのとないのとでは大きく違いますし、通訳があって初めて聞こえる方と同じ(全く同じとは言えないけどそれでもだいぶ良くなる)立場に立つことができるのです。

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左側が健常者(聞こえる人)、右側がろう者難聴者とする。

右側は通訳者を介して初めて40~60%(技術的にまだ低い通訳者の場合)、または60~80%(技術のある通訳者)(★かなり技術のある人でも90-98%)の情報を受け取ることができる。

もし通訳がなければ、0-30%(30%はレジュメなどからの情報または軽度難聴者の場合)となってしまう。

 

その状態で、「通訳は用意できなかったからパワポでご理解ください」というのが果たして合理的配慮になるのか・・・?というと、「これは違う」とはっきり言えますね。

 

では、どうすれば良かったのか?

もちろん、「用意できなかったものは仕方がない」こともあるかもしれません。

でも、一か月も時間があったにも関わらずその返答・・・というのはちょっとないかなというのが私の感想です。

あえて言うならば、その1か月の間に通訳者を探すことは充分にできたはずです。

(していたのかもしれませんが・・)

 

その上で、「1か月間あちこち探しましたが、用意できませんでした。申し訳ありません」という言葉を下さるのならまだ、心理的にも納得できますよね。。。

 

主催者側で見つからなければ依頼者にもお願いする

本当に1か月間探してそれでも見つからなかったとしても、「用意できなかったのでパワポで・・」と言うのではなく、「こちらで一か月間探しましたが、見つかりませんでした。もし良ければ、そちらで誰か知り合いやご友人など、通訳できる方はおりますでしょうか?もしおられるのでしたら、費用などはこちらで持ちますので、どなたかに依頼お願いできますでしょうか?」ぐらいは言えると思うのです。

 

それさえもなく、ただ「パワポがあるので~」というのは投げやりすぎないかな、と思います。

合理的配慮のセミナーをする側としては、もう少し誠意を見せて見つからないなら見つからないなりに色々と提案してほしかったかな、と思います。

 

今後は・・・

今、ぶりりんさんは各方面に連絡し、なんとかしてセミナーに参加できるようにしたいと手を尽くしているそうです。

本来はそれは主催者がするべきことですが・・・

ともかく、今後の様子を見守っていこうと思います。

 

追記

今はどうやら、周囲の方々の協力のおかげで文科省から手話通訳の派遣依頼をしていただくことになったとか。

そのあたりの経過は詳しくは聞いていませんので、近々本人に確認させて頂こうと思っています。少々お待ちください。

 

再追記

 

こちらについての続編(とはいっても大したことありませんが)はこちらにまとめてあります。⇒